一社労士の「芽」

事業継続・撤退の意思決定について

昨日、あるYouTuberの事業継続事業撤退についての緊急動画を視聴しました。
御本人方が有名な方なこともあり、憶測ばかりのネットニュースがたびたび掲載され、その内容を否定する意味もあっての動画でした。

それぞれのコメント欄でも視聴者の様々な声がありましたが、大きく分類すると下記のとおりでした。

・事業を継続するも撤退するも勇気
・経営者の判断として、撤退が正解
・(継続を選択した方に対して主にメンタル面で)大丈夫か心配

私が「自分だったら」で考えての選択肢は「撤退」です。

この事業を仮にプロジェクトとして考えて、スタート時から戦略に粗さが目立っていました。
共同経営であったことも難しさとしてコメントしている方が多かったですが、誰がどの領域を担当し責任を持つのかは最初の計画の時点で仕様として決めなければならないことなので、品質チェック体制も含めて御本人方だけでなく組織全体に問題がありました。

一方の方は YouTuberである前に実業家で、提携で結果を残しているので、期待値が実態より高すぎたこともあるかもしれません。
これまでの提携相手は企業であり、そういう意味では前述の仕様決定やチェック体制などは当然にすでに相手側にあるでしょうし、上場企業なのでとても厳しいものだと推察できます。

今回は提携相手が規模的には小規模事業者のカテゴリーに入り、御本人を含めてビジネスのプロではありません。
メニュー開発についても動画に出演もされていたプロの方が関わっているかと思いきや、実際はそうではなかったようです。
知人の詳しい方に助力をお願いしているとのことだったので、少なくとも飲食業界に関わっている方だとは思いますが。

飲食業界は平時でも難しい業界ですが、特にこの2年はコロナ禍で大打撃を受けており、地元でも開業したばかりの飲食店が1年も絶たず閉店している、チェーンの低価格帯飲食店が撤退している、という状況です。

飲食店に限らずですが、売り上げは「客単価×客数」で決まるので、コロナ禍では客数について従前の来店を主軸にした事業展開では大変厳しいです。
通販が活況なのは、いわゆる巣ごもり需要でここを伸ばすことができたからです。
もうひとつの要素である客単価は業種・業態によりますが、需要を掘り起こすことでもあるのでこちらはこちらで戦略が必要です。
(私なら、中程度の価格帯で「品数×単価=客単価」を取りに行く)

思い付いたことだけでもこれだけの懸念点がありますが、現時点での撤退を正解と考える一番大きな理由は固定費です。

飲食業に限らず、固定費をいかに抑えるか、損益分岐点はどこにあるか、は経営判断の材料として重要です。
試食会の結果、お客様に提供できるレベルのサービスではないという判断に至りオープン延期となっていますが、その間も家賃、光熱費、人件費、諸々の固定費は発生します。
「家賃分を3日で稼げなければ事業継続は難しい」はよく言われることです。

人の管理についてはどのようにされているかが不明なので、普通にスタッフとして雇用されていることを前提にすると、事業撤退=廃業なので整理解雇ということになると思いますが、スタッフ側には落ち度がまったくないとして可能な限り退職に関する条件を整備するとしても(例えば転職先あっせん、月給複数月分の退職金、など当座の生活保障)、労使双方にとって現状取り得る最善策と考えます。

ある程度規模が大きい企業ならば、「スクラップ&ビルド」も選択肢となりますが。

経営資源には「人」もあるので、もちろん温かい経営であることが一番ですが、同時に経営者は冷静でなければなりません。
「金」で後ろにも前にも進めない状態となってしまったら、結局「人」にも大きなリスクを背負わせることになります。
株の売買で「損切り」という言葉がありますが、それは経営にも言えます。
これ以上のマイナスを増やさないことです。

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