経営企画室

事例

快適な職場環境を整える

検討テーマ

多面的な見方ができる「職場環境」を、対症療法的ではなく職場全体の環境問題として改善に取り組む。

問題の把握と分析

第一段階~現状調査

従業員アンケートを行う(課題の認識)

顕在化していない問題や、放っておくと大きな問題になりかねない職場の改善点、それらを早期発見するために全社でアンケートを実施します。アンケートの実施は自社で行う他、専門業者に外注することが考えられます。

ハラスメント等、被害者の相談があり、職場に関する問題が顕在化することもありますが、国の調査によると職場環境に関し悩みを抱えていても相談せずに我慢をする、退職という形で自己解決を図る、という割合が高いです。
課題を経営陣が認識していないということは、離職リスクや個別労働関係紛争への発展リスクを常に抱えているということです。また、それらはメンタル不調者の発生原因にもなり、労災リスクにもなります。

調査結果を分析し、カテゴライズする

専門業者に依頼をする場合は、調査結果の分析・課題の発見等のレポートも通常セットになっています。また調査と分析をできるWebアプリを提供している業者もあります。

自社で独自に調査を行う場合は、分析も課題の種類分け(例:5Sに関すること、ハラスメントに関すること、長時間労働に関すること、職場のコミュニケーション一般に関すること、等)も自社で行わなければなりません。
外注にはコストがかかりますが、自社で調査分析の場合にも工数という名の人件費がかかります。また分析に手間取り、タイムリーな情報でなくなるリスクもありますので、上手に業者やWebシステムを利用することが現実的でしょう。

解決の優先順位を付ける

分析結果を基に、解決の優先順位を付けます。何を優先するかは会社により違いますが、共通して優先度が高いのは「離職」「個別労働関係紛争」に繋がるリスクがあるものです。

第二段階~課題共有の場を作る

対策委員会やプロジェクトチーム等の労使参加型の話し合いの場を作る

労使で課題を共有する場を持ちます。特に労働者側に主体的に参加することを促します。
参加者を公募するのが望ましいですが、中小企業では自ら手を挙げる環境でないことも少なくないです。経営者側から指名をする場合は各世代のバランス、男女同数であること、管理スタッフ(総務や人事労務)が参加すること、に注意します。経営者は中立的に議長として参加します。

定期に意見交換をする

まず、調査の分析結果を基に、率直な意見を出し合います。この時に注意することは、優先課題に対するダイレクトな意見でなくても発言を遮らないことです。問題を抱える職場はコミュニケーションに難があります。活発な意見交換をする雰囲気を作れるまでは、「安心して発言できる環境を整えること」を重視してください。

第三段階~対策を考える

対策委員会等の労使の話し合いの場で、課題についての対策を具体的に詰めていきます。対策として考えられるのは以下です。

・会社の方針(トップメッセージ)
経営者が考えるあるべき職場の姿をメッセージにするものですが、労働者側の意見も盛り込むのが望ましいです。特にハラスメントについては、加害者側が自身に甘い判断をしますから、なるべく様々な視点からチェックすると予防に実効を持たせることができます。

・相談窓口の設置
困ったことがあった時に気軽に相談できる窓口を作ります。注意点はプライバシーを守る方法を採用することです。
一般的に、管理スタッフ(総務や人事労務)が担当となることが多いですが、可能であれば外部専門家(カウンセラー、社会保険労務士等)と連携することをお勧めします。
特に小規模で、誰が相談したか特定されやすい会社では、外部専門家との連携が必須です。
ある程度の規模があり個人特定リスクが低い会社で社内担当者を置く場合は、複数人かつ男性担当・女性担当を選任するのが望ましいです。

・教育
ハラスメント等社会的にも優先順位が高い課題は早期の基礎教育実施を検討します。
対象者(全員、一般社員、管理職)、内容、実施形態(講師を招く、Web教育、セミナー参加等)、頻度、を決めます。
また、コミュニケーションに課題がある場合は、相互理解を進めるためのワークショップを企画することも有効です。

・スタッフハンドブック
職場のルールとしては就業規則が基礎となりますが、一般的に表現が堅く専門知識がない人にとっては困った時の手引きとして使いづらいものです。
イメージとしては、飲食業のハウスルール、派遣業のスタッフハンドブック、が近いです。
就業規則の服務の項に定められる各規定を日常ルール(5S等)に落とし込んだもの、困った時にどこに相談すれば良いか、災害等緊急時のルール、等が内容として考えられます。
快適な職場を維持し、お互いに気持ち良く仕事をしていくためにはどのようなルールが必要か、は労使の話し合いを最も生かせます。
ただし、小規模な事業所では「職場のルール〇箇条」といった簡易な形式でも問題はありません。大切なのは「互いに気持ち良く仕事をしていくためには」です。

対策の実行

会社の方針(トップメッセージ)の周知

対策委員会等の労使の話し合いの場で整理した内容を方針として文章にまとめ、朝礼や全体会議等で全社に公表します。公表後はイントラネットや掲示板に掲示し、いつでも内容を確認できるようにします。
この時、公表をするだけでなく、相談窓口について連絡先カードの配布をしたり、その場で内容に対する質問を求めたり、後日でも意見を受け付けることを伝え、全員が「自分ごと」とできるようにします。

職場におけるルールの共有

職場環境を悪化させる原因のひとつとして、在籍年数が長い人や人当たりや言葉がきつく周囲が反論をしづらい人が「自分ルールを職場のルール化する」ということがあります。たいていの人は「空気を読んで触らない」という対応をしますが、経営方針を落とし込んだ正統な職場ルールでない以上、暗黙の了解をしてしまうことは誤った権力者意識を持たせハラスメントの温床になります。

「快適な職場」を育てる良い土は、「皆が納得できる正統な職場ルール」です。スタッフハンドブック等明文化されたもので正統なルールの共有をし、職場カーストやマウンティングと呼ばれるものを排しましょう。

全社員に対する基礎教育の実施

優先的に実施することが望ましいのは、ハラスメントとメンタルヘルスについての教育です。

ハラスメントは「受け手側が不快と感じること」を基準に考えると30種類位のハラスメントが存在し、加害者の考え方や被害者の捉え方と共に問題となるケースはどのようなものかを学ぶことで「他者との良好な関わり方」を学ぶことができます。

メンタルヘルスは職場改善や上司や専門家によるフォローがもちろん重要ですが、「セルフケア」も心の健康づくりに重要なため、正しい理解や対処法を学び「本人が予防に取り組む」ことができるようにします。

また、教育実施の際は、経営陣も参加しましょう。

役職者に対する管理監督者向け教育の実施

基礎教育後、役職者に対する管理監督者向け教育を実施します。自身の行動・言動を律する目的だけでなく、部下の見守りや指導を学びます。

参考:ワークショップによるコミュニケーション改善

職場により、コミュニケーション改善方法は様々なものが考えられますが、所定時間内に社内研修としてファシリテーターによるワークショップを開催することがお勧めです。
例えば食事会等もよくある方法ですが、「いつものグループ割」「いつもの話し相手」「いつもの内容」に留まる可能性が高いです。
「相互理解」をテーマにしたワークショップは、接する機会が少ない人に親しみを持つきっかけになります。

諸規程の整備

日常生活で参考にする職場ルールとしてスタッフハンドブック等がありますが、実際にハラスメント等の問題が起こった場合、加害者への罰則や被害者への救済の根拠となるのは就業規則です。中小企業ですと、何年も改訂せずに古いままだったり、届け出義務がある人数に満たないのでそもそも就業規則がなかったり、ということがよくありますが、必要最小限のコンパクトなもので良いので整備をしましょう。

特に加害者を罰することは根拠となるものがないとできません。また、根拠となるものがないと類似ケースにも関わらず時々で対応が変わり矛盾が生じるということになりかねません。

改善の継続

快適な職場環境の維持は、継続した改善の果実です。
改善策実行後は定期的に従業員アンケートを行い、「現在」を確認しましょう。想定していた結果が出てないものや新たに見付かった課題について、改めて対策委員会等の労使の話し合いの場で取り上げます。
教育やコミュニケーション改善についても、継続することが大切です。
そして新たな改善は再度職場ルールに落とし込み、諸規程とのチェックも行います。

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