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【コラム】第17回 産後パパ育休制度8~産後パパ育休期間中の就業1-1

毎週日曜日のコラムです。
法改正などを身近なものと感じて頂けるよう、基本的なことをわかりやすく取り上げます。
今後、複数回にわたり現行の育児介護休業法を取り上げ、その中で4月の法改正についても触れていきます。

前回は「産後パパ育休制度(出生時育児休業制度)」の内、「産後パパ育休の期間の終了・申出の撤回等」についてお話しました。
今回は、「産後パパ育休期間中の就業」のうち申出から就業日等の決定まで、についてお話します。

産後パパ育休期間中の就業を可能にする要件

通常の育児休業と異なり、産後パパ育休は法で定めれた要件を満たすと、「休業中の就業」を希望する労働者に就業をさせることができます。
産後パパ育休の主な対象は男性労働者ですが、男性の育児休業取得率が女性に比べ低い大きな理由のひとつが「ある程度の期間、仕事を離れないとならないこと」のため、条件付きですが育休期間中の就業を認めることで取得率を向上させることを目的に導入された制度です。

  1. 産後パパ育休期間中の就業について労使協定を締結
  2. 事業主が「産後パパ育休期間中の就業」を認めてよいと考える場合、まず「産後パパ育休期間中の就業」について労使協定を締結する必要があります。
    労使協定には、産後パパ育休期間中に就業させることができる労働者の範囲を定めます。
    尚、この労使協定は事業所ごとに締結することも可能ですので、育児休業取得率が低い現場系の事業所では締結し、育児休業取得が浸透している管理系の事業所では締結しない、ということも可能です。

  3. 休業中の就業を希望する労働者が申出
  4. 産後パパ育休中の就業は、就業を希望する労働者が事業主に申出をすることで、一連の手続きがスタートします。
    つまり、労使協定で「就業可能な労働者」として定められた労働者が希望する場合を除き、原則として育休中の就業をさせることはできません。
    (産後パパ育休を含め、育児休業期間中に就業をさせることができる例外はありますが、ここでは割愛します。)

産後パパ育休期間中の就業の申出

産後パパ育休期間中の就業」を希望する労働者は、産後パパ育休開始予定日前日までに、事業主に厚生労働省令で定める事項(就業可能日等)申出をすることができます。

  1. 申出なければならない内容(厚生労働省令で定める事項
    • 産後パパ育休期間中の就業することができる日(就業可能日
    • 就業可能日の就業可能な時間帯
    • 時間帯は所定労働時間内に限ります。

    • その他の労働条件
    • 例えば、テレワークが可能な場合はその希望、就業の場所、などです。

  2. 申出方法
  3. 原則として、書面を提出することで産後パパ育休期間中の就業の申出をします。
    ただし、下記の場合は書面以外の方法で行うことができます。

    • 事業主が下記のいずれかを申出方法として適当と認めている
      • ファクシミリを利用して送信する方法
      • 電子メールその他を利用して送信する方法
    • 電子メールその他による申出の場合は、印刷し書面を作成できること

    電子メールその他の「その他」についてですが、イントラネットやGmailなどのwebメール、SNSなどを指します。
    事業主が認めた場合はこれら電子的な方法で申出をすることができます。

  4. 就業可能日等の変更、申出の撤回
  5. 産後パパ育休開始予定日前日まで、就業可能日等の変更申出撤回、をすることができます。
    変更撤回、の方法は申出の方法と同じです。

産後パパ育休期間中の就業の申出があった時に提示しなければならない内容

事業主は、労働者から産後パパ育休期間中の就業の申出があった時は、就業日などを速やかに労働者に提示しなければなりません。

  1. 事業主が労働者を就業させることができる範囲
  2. 労働者が申出をした就業可能日の範囲内、かつ下記のすべてを満たす必要があります。

    • 就業させることとした日(就業日)の合計日数 ≦ 産後パパ育休期間の所定労働日数×1/2
    • 1日未満の端数は切り捨てます。

    • 就業日の労働時間の合計 ≦ 産後パパ育休期間の所定労働時間×1/2
    • 下記の場合、その日の労働時間数 < その日の所定労働時間数
      • 産後パパ育休開始予定日を就業日にする場合
      • 産後パパ育休終了予定日を就業日にする場合
  3. 提示しなければならない内容
    • 就業可能日のうち就業させることを希望する日
    • 就業させることを希望しない場合はその旨
    • 就業時間帯
    • その他の労働条件
    • 例えば、就業の場所、業務内容、などです。

    申出撤回があった場合は、撤回があった旨を事業主が改めて確認することについて法的義務はありませんが、労働者の意思を確認する意味からも提示をすることをお勧めします。

  4. 提示方法
  5. 原則として、書面を交付することで提示をします。
    就業の申出方法と同じく、提示は下記の場合を除き書面で行うことになっています。

    • 労働者が下記のいずれかを提示方法として希望している
      • ファクシミリを利用して送信する方法
      • 電子メールその他を利用して送信する方法
    • 電子メールその他による提示の場合は、印刷し書面を作成できること

    電子メールその他の「その他」についてですが、イントラネットやGmailなどのwebメール、SNSなどを指します。
    労働者が希望した場合はこれら電子的な方法で提示をすることができます。

  6. 提示の場合の「速やかに」とは
  7. 提示の後に続く労使間の諸手続き等を考慮して、下記のとおりです。

    申出時点~休業開始予定日前日 提示の原則期限
    4週間以上前 おおむね2週間以内(1ヵ月の半分程度)
    4週間前~2週間前 申出時点に応じて、おおむね2週間~1週間
    2週間前~1週間前 おおむね1週間以内
    1週間以内 開始予定日前日までの間で可能な限り速やかに
事業主の提示に対する労働者の同意

原則として、書面を提出することで、事業主の提示に対する同意をします。
ただし、下記の場合は書面以外の方法で行うことができます。

  • 事業主が下記のいずれかを同意の方法として適当と認めている
    • ファクシミリを利用して送信する方法
    • 電子メールその他を利用して送信する方法
  • 電子メールその他による同意の場合は、印刷し書面を作成できること

電子メールその他の「その他」についてですが、イントラネットやGmailなどのwebメール、SNSなどを指します。
事業主が認めた場合はこれら電子的な方法で同意をすることができます。

労働者の同意を得た事業主の通知

通知は、労働者の同意を得た時点から、おおむね1週間以内に(速やかに)しなければなりません。

  1. 通知しなければならない内容
    • 産後パパ育休期間中の就業日等について同意を得た旨
    • 産後パパ育休期間中の就業日時
    • その他の労働条件
    • 例えば、就業の場所、業務内容、などです。

  2. 通知方法
  3. 原則として、書面を交付することで通知をします。
    提示方法と同じく、通知は下記の場合を除き書面で行うことになっています。

    • 労働者が下記のいずれかを通知方法として希望している
      • ファクシミリを利用して送信する方法
      • 電子メールその他を利用して送信する方法
    • 電子メールその他による通知の場合は、印刷し書面を作成できること

    電子メールその他の「その他」についてですが、イントラネットやGmailなどのwebメール、SNSなどを指します。
    労働者が希望した場合はこれら電子的な方法で通知をすることができます。

以上、「産後パパ育休期間中の就業」の内、申出から就業日等の決定まで、について見てきました。
通常は、労働者が就業を希望する日を事業主に伝え、法的に就業が許される範囲内で労使で合意し就業日等を決定し、そのまま産後パパ育休に入ることが多いと思いますが、労働者が同意をした後に事情が変わり全部または一部を撤回したい場合もあります。
次回は、そのような場合の撤回に関する手続き、についてお話します。

「参考資料」
育児・介護休業法のあらまし

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