毎週日曜日のコラムです。
法改正などを身近なものと感じて頂けるよう、基本的なことをわかりやすく取り上げます。
今後、複数回にわたり現行の育児介護休業法を取り上げ、その中で4月の法改正についても触れていきます。
前回は「育児休業の対象となる労働者」についてお話しました。
今回は「育児休業の申出」についてお話します。
育児休業をするにはまず事業主に対して申出をしなければなりません。
そしてこの申出ですが、「申出方法」「申出なければならない内容」があります。
こちらを満たしていないと正式な申出をしたことになりません。
また「申出が可能な回数」があり、厚生労働省令で定める特別の事情がある場合を除いて再度の申出をすることはできません。
どのような方法で、どのような内容を申出なければならないのか、再度の申出ができる特別の事情は何か、見ていきましょう。
育児休業の申出方法
原則として、書面を提出することで育児休業の申出をします。
コロナ禍を経て、様々なことがペーパーレス化していますが、育児休業の申出は下記の場合を除き書面で行うことになっています。
- 事業主が下記のいずれかを申出方法として適当と認めている
- ファクシミリを利用して送信する方法
- 電子メールその他を利用して送信する方法
- 電子メールその他による申出の場合は、印刷し書面を作成できること
電子メールその他の「その他」についてですが、イントラネットやGmailなどのwebメール、SNSなどを指します。
事業主が認めた場合はこれら電子的な方法で申出をすることができますが、「申出なければならない内容」が漏れなく記載されていなければ正式な申出をしたことになりませんので、実務的にはフォーマット化することをお勧めします。
育児休業の申出が可能な回数
原則
- 1歳までの育児休業 2回
- 1歳6ヵ月まで、または2歳まで、の育児休業 各1回
例外
下記の事情(厚生労働省令で定める特別の事情)が生じた場合は、再度の申出をすることができます。
ただし、1歳6ヵ月まで、または2歳まで、の育児休業の場合は、1.と2.の場合に限り再度の申出をすることができます。
- 新たな産前産後休業、産後パパ育休、育児休業、の開始で休業が終了していた場合
- 新たな休業の対象となった子が死亡
- 新たな休業の対象となった子が他人の養子になったなど、労働者と同居しなくなった
- 介護休業の開始で休業が終了していた場合
- 介護休業の対象となった家族(対象家族)が死亡
- 離婚など、労働者との親族関係が消滅
- 配偶者が下記に該当する場合
- 死亡
- 傷病、身体または精神の障害、で子の養育が困難になった
- 離婚など、子と同居しなくなった
- 育児休業の可能回数を終えた子が下記に該当する場合
- 傷病、身体または精神の障害、で2週間以上の世話が必要になった
- 保育所などの入所を希望しているが入所できない場合
第一子について休業をしていた時に、第二子について休業が開始した時などが当たります。
認可外保育施設は「保育所など」に含みません。
参考:有期雇用労働者の育児休業
労働契約更新後も引き続き休業をしたい場合、暦の上では間は空いていませんが、改めて、更新後の労働契約期間の初日を育児休業開始予定日として、申出をしなければなりません。
労働契約更新のお話があった場合、こちらについても忘れず確認し手続きをしてください。
ただし、この場合は再度の申出には当たりません。
育児休業の申出に当たって申出なければならない内容
申出なければならない内容は下記です。
人事労務担当者や総務担当者など、窓口担当者がチェックをしてくれているはずと思っていても、案外チェック漏れや理解不足で「正式な申出」となっていないケースがありますので、提出前チェックを必ずしましょう。
必ず記載しなければならないこと
- 申出の年月日
- 労働者の氏名
- 申出に係る子の状況
- 氏名
- 生年月日
- 労働者との続柄
- 休業の開始予定日、休業の終了予定日
申出に係る子がまだ生まれていない場合は、
氏名 → 出産予定者の氏名
生年月日 → 出産予定日
となります。
特定の場合に記載しなければならないこと
- 申出に係る子以外に1歳未満の子がいる場合
- その子の氏名
- その子の生年月日
- 労働者との続柄
- 申出に係る子が養子である場合
- 養子縁組の効力発生日
- 育児休業の申出可能回数を終えた後に再度の申出をする場合
- 再度の申出が許される事情(厚生労働省令で定める特別の事情)
- 1歳までの育児休業をしている労働者が、1歳6ヵ月まで、または2歳まで、の育児休業の申出をする場合
- 休業が必要な理由
- 配偶者が1歳までの育児休業をしている労働者が、1歳6ヵ月まで、または2歳まで、の育児休業の申出をする場合
- 配偶者が育児休業をしていること
- 休業が必要な理由
- 特別の事情があり、休業開始予定日の1週間前に育児休業開始日を指定する場合
- 特別の事情の内容
- 1歳6ヵ月まで、または2歳まで、の育児休業の申出を撤回後に特別の事情があり、再度の申出をする場合
- 特別の事情の内容
- パパ・ママ育休プラスの特例で1歳の誕生日(1歳に達する日の翌日)以後の育児休業をする場合
- 労働者の育児休業開始予定日が、配偶者の育児休業開始日以後であること
- 申出に係る子について育児休業をしたことがある場合
- その育児休業期間
- 申出に係る子について育児休業の申出を撤回したことがある場合
- 撤回したことがある旨
申出に係る子以外の子について育児休業をしている場合は、申出に係る子の育児休業が開始した時に休業が終了します。
雇用継続のために特に必要と認められる厚生労働省令で定める場合に該当しなければなりません。
詳細は今後別の回で取り上げます。
子の1歳の誕生日前日(1歳到達日)に育児休業をしていなければなりません。
子の1歳の誕生日前日(1歳到達日)に育児休業をしていなければなりません。
雇用継続のために特に必要と認められる厚生労働省令で定める場合に該当しなければなりません。
詳細は今後別の回で取り上げます。
厚生労働省令で定める事由に該当しなければなりません。
詳細は今後別の回で取り上げます。
厚生労働省令で定める特別の事情に該当しなければなりません。
詳細は今後別の回で取り上げます。
以上、「育児休業の申出」について見てきました。
今回の内容では、説明の便宜上、一部「1歳6ヵ月までの育児休業」「2歳までの育児休業」に関することが含まれています。
また、たびたび「厚生労働省令で定める~」が登場しましたが、こちらもそれぞれ今後別の回で取り上げます。
次回は、労働者が申出をした後に事業主がしなければならないこと、また事業主の義務、についてお話します。
「参考資料」
育児・介護休業法のあらまし