一社労士の「芽」

専門職の何を評価すべきか~助成金不正申請事件について

新型コロナ対策雇用調整助成金をだましとった女性社会保険労務士が逮捕されました。
実際には在籍がない従業員への休業手当を偽装して申請を行ったとのことです。

同業者として恥ずかしいお話ですが、キャリアアップ助成金などの他の助成金申請でも、要件に当てはまるかのように偽装して申請を行い摘発されるケースは業界内では「よくある話」です。
会報などに処分社会保険労務士の情報が掲載されますが、ほぼ助成金不正受給関連です。

まず非難されるべきは不正手続きをした社会保険労務士なのはもちろんですが、不正をしてまでも助成金を求める「顧客」が存在するゆえに成り立つ商売です。

助成金とは、施策を実行した際にかかった経費や、例えば時給を上げたことで増えた人件費に対して「補助」の意味で支給されたり、ある目標を達成していることに対する「報奨」として支給されたりするものです。
共通しているのは、政策や社会の求めにいち早く対応=実行していること、です。

ところが実際は、特に中小企業にありがちですが、「実行(し続けること)」が抜けており「もらえるもの」に認識がすり替わり、「もらうため」に「無理やり条件を満たす」ことが横行します。
そして、遵法の意識が弱い社会保険労務士と需給が一致し、今回のような恥ずかしい事件が起こります。

このように助成金の趣旨を理解してないことが最大の理由ですが、もうひとつ、いわゆる「助成金社労士」を重宝する、評価する、社会的風潮も等しく大きな理由です。

「中小企業の味方になって」「無理を聞いてくれる」

ここで言う「味方」「無理」とは、「形式が審査基準に合うように過去を整えること≒改ざん」を暗に指します。

将来に向かって業務や実績を改善する、またそのための専門家への相談・依頼なら、国が助成金を施策として行う趣旨に合致します。

私たち社会保険労務士が同業者の失態を他山の石とすることはもちろん、相談・依頼する側の個人や企業も助成金の趣旨を正しく理解し、安易に資金調達のひとつと考えないこと、「通る書類に改ざんする能力」ではなく、人事労務コンサルティングの実績があるか、労働社会保険諸法令に通じているか、本来は専門家を評価する際の当たり前の視点で当たり前に評価することが、今回のような事件をなくしていくことに繋がります。 

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