一社労士の「芽」

小規模事業者も労務管理を避けて通れない時代到来

労務管理という言葉を聞くと、ある程度の規模がある会社を思い浮かべることが多いと思います。
一般的なイメージですと20人超えあたり位からでしょうか。

10人に満たないと就業規則作成提出義務がないので、必要最小限で労働三帳簿(労働者名簿・賃金台帳・出勤簿)をかろうじて作成管理していて、法的にはあってはならないことですが雇用契約書を作成したことがない小規模事業者も少なくないと推察します。

また、20人超位でも、労務担当者を専任で置いたり顧問社労士がいたりすることはまだ少ないでしょう。
経理総務という括りで経理担当者が労務手続きと管理をしていたり、経営者が実務を含んだ労務全般を担っていたり、中には業務の延長で顧問税理士に労務相談までしている事業者もあるでしょう。

私自身、会計業界に長くいましたので、監査担当としての業務の傍ら労務相談にも応じていました。
雇われる立場としては、会計と労務の両方が分かることが売りになったりしますしね。

ただ、やはり餅は餅屋。
他士業でダブルライセンスの方もいらっしゃるので一概には言えませんが、社会保険労務士が「労務の専門家」である以上、安心して「人」という経営資源の相談をできるのは社会保険労務士だと自負しています。
(まぁ、同業者の中に残念な社労士もいることはいますが。)

再び開業社労士となってから、自分自身としては当サイトのサービスメニューにも掲載しているとおり、小規模事業者の労務管理業務を柱のひとつとしています。
ニュースで労働紛争が取り上げられる時は大企業の事例ばかりですが、実際は労働分野の問題を抱えているのは小規模事業者の方が多いと考えるからです。

例えば、前述の 労働三帳簿作成義務 、また雇用契約書の作成義務、そんなのあるの?と思いませんでしたか?

また、雇用保険や社会保険(健保・厚生年金)の加入基準、三六協定、育児介護休業等、ハラスメント対策、高齢者や女性の活用、それらはいかがですか?
他士業に「ついでで」依頼できるような簡単なものでしょうか?

ちなみにこれらすべて、要件に当てはまれば法人でなく個人事業主だとしても対応しなければならないことです。

会計については、長い歴史がある青色申告会の活躍もあり、割と個人事業主の方でもきちんとされていたりするのですが、残念ながら労務分野については青色申告会のようなものはないですので、問題が起きて初めて労働基準監督署や年金事務所に相談する、または知らずに法に反していて調査でそれが判明する、が現状でしょう。

現時点でさえ、100人に満たない企業でも本当ならばきちんと管理し専門家の相談者を持つべきなのですが、令和4年には「雇用保険マルチジョブホルダー制度」「改正育児・介護休業法」の施行があり、さらに小規模事業者にとっての労務管理の難易度が上がります。

理想は、起業当初から会計だけでなく労務についても専門家の相談者を持つことです。
当初からコツコツ整備していき、規模に応じて労務管理の充実を図っていくと、労働紛争も起きにくくなりますし、仮に起きたとしても双方納得がいく解決を早期にできるでしょう。
問題が起きてから後手後手で対処するのでは、場合によっては経営自体へ大きな損害を与える可能性もなくはないでしょう。
(労働紛争による企業価値の低下、労働紛争の相手方への賠償、など。)

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

CAPTCHA


PAGE TOP