一社労士の「芽」

法改正対応の難しさ~社会保険適用拡大・産後パパ育休(出生時育児休業)

10月1日に、社会保険適用拡大厚生労働省特設サイト)、産後パパ育休(出生時育児休業)(要旨はこちら)、が施行されました。

労働局で相談員をしておりますが、産後パパ育休については春先から問い合わせが増え、解釈や各会社の制度にどのように取り入れ規定していくか、など対応に苦慮されている会社が多いです。
条件付きですが、産後パパ育休中の就労も認められましたしね。

改正の方向性としましては、多様な働き方をより推進していく、育児を理由とした離職を減らす、男性が育児に参加しやすい環境をさらに整備する、といったところでしょうか。

大企業中心ではありますが、育児目的休暇制度など独自の制度設計をしている会社も少なくなく、会社独自制度と法定の育児休業を組み合わせた制度設計も可能であるなど、オリジナリティを出せる幅が広がっていっている印象です。

相談対応では基本的に法の原則を説明する、一般的には、という回答が多くなりますが、制度の柔軟性が増したことで個別具体的な相談が増えました。
最も困るのは「例えば」での相談で、実際に起こっていないことに対して回答しなければならないケースです。実際に起こっていないが故に条件設定が難しく、細かい例外まで考慮するとエンドレスに陥りますので。

労働局に相談するのは実際に事案になったものにしましょう。あいまい条件設定では回答に限度があり、その限度を鵜呑みにされてしまうとリスクがあるからです。

同じことが社会保険適用拡大についても言えます。

私の仕事は労働局の相談員なので、他の相談の関連で時々ついでに聞かれる程度のため、原則的な回答で大丈夫ですが、年金事務所に問い合わせる時には具体的に条件設定してお話をされることをお勧めします。

例えば、条件の中で「従業員数101人以上」というものがありますが、単に雇用人数をカウントするということではなく、常時雇用なのか、被保険者となれる条件に該当する人なのか、など、さらに細かい条件があるんですね。
雇用人数は多くても常時雇用が少ない、被保険者になれる人が少ない、ということはあり得ますので。
特に今回の改正で適用の可能性がある、非正規労働者が多い業界(製造、飲食、建設、介護、など)は注意が必要です。

これまでは大企業がスタンダードを作り、中小企業が対応可能な範囲内でそれをベンチマークにして制度設計する、という形が多かったでしょう。つまり、基本的に型は似たり寄ったり、規定例などを参考に取りあえず対応しておけばOK、というケースも少なくなかったと言えます。

ただし、今後は働き方改革の影響もあり、多様な働き方、多様な生活設計、多様な人生設計、が当たり前になり、同じくらいの規模の会社、同じ業種、だったとしても「我が社はどうするか」「自分の勤務先はどうなのか」という視点が必須となります。

法の水準を守るのはもちろんのこと、雇用する労働者に長く勤めてもらえる環境を整えること、実際の運用と制度に乖離がないこと、それらを定期的にチェックできていること、はオーダーメイドでなければ難しくなっていくでしょう。

備えあれば患いなし。前もってのリスクヘッジは対費用効果も良いものです。起こってしまってからのリカバリは見えにくい損失(人材流出、イレギュラー対応への人材・時間・経費の浪費)も含め難しいものです。

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