事例・考察

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【コラム】第3回 事業主の義務

毎週日曜日のコラムです。
法改正などを身近なものと感じて頂けるよう、基本的なことをわかりやすく取り上げます。
今後、複数回にわたり現行の育児介護休業法を取り上げ、その中で4月の法改正についても触れていきます。

前回は「育児休業の申出」についてお話しました。
今回は「事業主の義務」についてお話します。

労働者から育児休業の申出があった時は、事業主は原則として拒むことができません。
労働局で指導員をしていた時に、「うちの会社は育児休業制度はないと言われた」という相談を受けたことがありますが、規模を問わずすべての会社が制度を整備しなければなりません。
また、育児休業の申出を拒むことができないだけではなく、申出をした労働者に対して速やかに「通知しなければならない内容」があります。
労働者から申出があった時に「通知しなければならない内容」「育児休業取扱いの通知方法」「申出を拒むことができる例外」、を見ていきましょう。

育児休業の申出があった時に通知しなければならない内容

通知しなければならない内容は下記です。
通知は、労働者が申出をした時点から、原則としておおむね2週間以内に(速やかに)しなければなりません。
ただし、育児休業申出日から育児休業開始予定日までの期間が2週間未満の場合は、育児休業開始予定日までに通知することができます。

  • 育児休業申出を受けた旨
  • 休業の開始予定日、休業の終了予定日
  • 労働者の申出が遅れた場合は、休業の開始時期を事業主が指定することができます(事業主変更権)。
    開始時期を事業主が指定する場合は、その旨と指定した開始時期を通知します。

  • 育児休業申出を拒む場合には、その旨及びその理由
育児休業取扱いの通知方法

原則として、書面を交付することで育児休業の取扱いに関する通知をします。
育児休業の申出方法と同じく、育児休業の取扱いに関する通知は下記の場合を除き書面で行うことになっています。

  • 労働者が下記のいずれかを通知方法として希望している
    • ファクシミリを利用して送信する方法
    • 電子メールその他を利用して送信する方法
  • 電子メールその他による通知の場合は、印刷し書面を作成できること

電子メールその他の「その他」についてですが、イントラネットやGmailなどのwebメール、SNSなどを指します。
労働者が希望した場合はこれら電子的な方法で通知をすることができます。育児休業の申出方法と同じく、実務的にはフォーマット化することをお勧めします。

申出を拒むことができる例外

下記の労働者について、労使協定を締結することで対象外にすることができます。
(参考:育児休業の対象となる労働者

  • 雇用期間が1年未満の労働者
  • 1年以内に雇用関係が終了する労働者
  • 週の所定労働日数が2日以下の労働者

労使協定は、三六協定などと同じく、過半数労働組合がある時はその労働組合、過半数労働組合がない時は過半数労働者と書面により締結します。
労使協定の締結をするまでは、上記の労働者に該当したとしても、申出を拒むことはできません。
就業規則を労働基準監督署へ提出する義務がない常時10人未満雇用の事業場も同じです。

当然ながら、労使協定を締結することで対象外にする以外、例えば人手不足、正規雇用ではないこと、経営上の理由などで、申出を拒むことはできません。

以上、「事業主の義務」について見てきました。
「通知しなければならない内容」のところで育児休業開始予定日に関する事業主変更権を補足しましたが、こちらは今後別の回で取り上げます。

次回からは、育児休業の期間について複数回にわたりお話します。

「参考資料」
育児・介護休業法のあらまし

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